BtoBマーケティングにおけるDOOHの活用

最終アップデート: 
July 19, 2023

昨今テクノロジーが改善したことによりBtoBの領域でもDOOHを効率的に運用し、多角的に効果検証をする方法やケーススタディが出てきています。今日はそんなDOOHの活用例をいくつかご紹介したいと思います。

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屋外広告、OOHは従来消費者向けの広告チャネルという認識が強く、その中でもブランド認知度をあげるといったファネル上部に対する施策として運用されていることがほとんどです。最近では他のデータと組みあせてデジタル屋外広告、DOOHを本格的に運用しているB2Cブランドも増えています。マクドナルド(イギリス)は気温が22度以上になると店舗付近のDOOHスクリーンでフローズンドリンクの広告を出したり、British AirwaysはDOOHスクリーン付近に自社の飛行機が通ると「バルセロナからのBA475便です」というメッセージを出すなど活用方法は広がっています。しかし、BtoBマーケターの方でDOOHを取り入れているケースはまだ少ないでしょう。予算などさまざまな理由がありますが、大きな理由の一つとしてDOOHが抱えていた最大の課題、効果検証能力の低さがあげられます。リスティング広告を運用した方が費用対効果も良いし、そもそもBtoBでDOOHを運用する意味があるのか?と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、昨今テクノロジーが改善したことによりBtoBの領域でもDOOHを効率的に運用し、多角的に効果検証をする方法やケーススタディが出てきています。今日はそんなDOOHの活用例をいくつかご紹介したいと思います。

  • BtoBのDOOHの活用例#1 ブランド認知度の向上

あるグローバルテクノロジー会社はターゲットオーディエンスであるIT部門の裁量権保持者が集まる大規模カンファレンス開催時に、会場付近のスクリーンでDOOH広告を展開し、カスタム分析ツールでブランド認知度のアップリフトを計測しました。このキャンペーンではDOOH広告と接触したデバイスIDを特定しDOOHスクリーンから離れた後もマルチチャネルでタッチポイントを継続して図ったり、特定したデバイスIDに類似したオーディエンスにもリーチを広げたりと、幅広い活用をしています。こちらはOOH広告の従来のファネル上部に働きかけるDOOHの運用方法ですが、BtoBでこの使い方をしている例はまだ珍しいでしょう。


  • BtoBのDOOHの活用例#2 ブランド検討の促進

日本インテル社は国内のヘルスケア、リテール、製造業界で裁量権のあるビジネスパーソンをターゲットに、DOOH広告に触れることで自社へのインテントのアップリフトが確認できるかを検証しました。OOH広告は主に認知度を広げる施策に使われることが多い中で、このキャンペーンは特定のオーディエンスをターゲットに、ブランド検討を促進するという目標で実施されました。キャンペーン内容を簡単に以下にまとめました。

  1. キャンペーン開始前に数ヶ月かけてオフィス街や展示会、セミナーなどのイベント会場付近でジオフェンスをひき、オフラインのデバイスIDデータをもとに裁量権保持者を特定しカスタムオーディエンスを設定
  2. 効果検証のため、コントロールグループ(DOOH広告なし)とエクスポーズドグループ(DOOH広告有り)を設定し、最適な場所でDOOH広告をプログラマティックに出稿
  3. DOOHでオーディエンスと接触した後、両グループのオフラインモバイルIDをオンラインIDにマッピング
  4. オンラインIDをBomboraに引き渡し、両グループのインテントの変化を計測

結果としてはエクスポーズドグループは業界平均で11.2%、業界別ではヘルスケア: 11.1%、製造業: 6.8%、リテール: 6.9%のインテントリフトを立証したそうです。とても複雑なキャンペーンなので、詳細にご興味のある方はぜひこのケーススタディのHivestackのウェビナー(Youtube/英語)をご覧ください。測定ダッシュボードなど詳しいところまで見せてくれているのでとても興味深いです。

引用: LIVE BOARD社ホームページ


また、このキャンペーンではLIVE BOARDという日本で初めてインプレッションベースにDOOH広告の出稿を可能にしたアドネットワークを使用しています。新型コロナウイルスの影響で外出自粛となり人流が減った街中でも、ビッグデータを活用して視認可能者数をリアルタイムに算出し、インプレッションベースにDOOH広告出稿ができるため、無駄のない配信ができるのです。

このように本格的なDOOHの活用がBtoBマーケティングの領域でも広がりを見せ、効果測定方法も改善されてきています。また、DOOHはインタラクティブな広告体験を実現できることも大きな強みです。これからもその活用方法は増えていくに違いないでしょう。特にインテル社の事例は上級者向けで、まだ一部の大企業だけが運用しているイメージかもしれませんが、テクノロジーは日々に進化しています。近い将来、効果的なチャネルの一つとして一般的に認識される日も近いかもしれません。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。