HENNGE株式会社

属人的なカスタマーサクセスから、自律的なCustomer-led Growthへ──HENNGE株式会社が進めるCS基盤・コミュニティ・ラーニングの一体設計

HENNGE株式会社 カスタマーサクセスディビジョン 寺田氏・藤原氏・松村氏

2029年度にARR200億円という全社目標を掲げるHENNGE株式会社。その成長を支える取り組みの一つとして進めているのが、属人的なカスタマーサクセスからの転換だ。

顧客ごとに異なる状況や理解度を捉え、それぞれに必要な支援を適切な形で届けられる仕組みを構築する。そして、その先に目指すのは、企業から顧客へ一方的に支援を提供するだけではなく、コミュニティを中心としたエコシステムの中で、顧客同士が学び合い、顧客自身の成長が生まれていく状態、すなわち「Customer-led Growth」である。

その実現に向けて同社は、カスタマーサクセスの基盤となる「Gainsight CS」、顧客同士をつなぐコミュニティ基盤「Customer Hub」、そして顧客の学習を支える「Skilljar」という3つの基盤を段階的に導入してきた。

なぜ、カスタマーサクセスの高度化が必要だったのか。3つの基盤をどのような考え方と順序で導入し、それぞれをどう連携させようとしているのか。そして、現時点で何が実現し、次にどのような課題に向き合っているのか。HENNGEのカスタマーサクセスディビジョンを担う3氏に、その背景と現在地、そして今後の展望を伺った。


お話を伺った方

HENNGE株式会社 Customer Success Division Deputy Division Manager 寺田 美穂 氏

HENNGE株式会社 Customer Success Division / Customer Marketing Section Manager 藤原 竜也 氏

HENNGE株式会社 Customer Success Division / Scaled Success Section Manager 松村 翔太朗 氏


1. HENNGE株式会社の事業と、カスタマーサクセスの考え方

――はじめに、御社の事業と、カスタマーサクセスにおいて大切にされていることをお聞かせください。

HENNGE株式会社 Customer Success Division Deputy Division Manager 寺田 美穂 氏

HENNGE株式会社 Customer Success Division Deputy Division Manager 寺田 美穂 氏

寺田氏:弊社はセキュリティ企業として認知いただくことが多いのですが、経営理念として掲げているのは「テクノロジーの解放」です。昨今、AIをはじめとするテクノロジーが目まぐるしく進化する一方で、その技術はますます複雑化しています。そうした中でも、誰もが安全かつ簡単にテクノロジーの利便性を享受できる環境の実現を目指しています。

その中核となるサービスが、クラウドセキュリティを軸とした「HENNGE One」です。HENNGE Oneは、「Identity Edition」「DLP Edition」「Cybersecurity Edition」の3つのエディションで構成され、それぞれ異なるセキュリティ領域をカバーしています。

HENNGE One サービス概要図

HENNGE Oneのサービス構成

寺田氏:ひと口に企業のセキュリティといっても、その対象領域は多岐にわたります。HENNGE Oneは、そうした幅広い領域を全方位でカバーしていくことをコンセプトとしています。また、特定のプラットフォームに依存せず、専門的な知識がなくても導入・運用しやすい点も特徴です。HENNGE Oneを通じて、お客様がさまざまなクラウドサービスを安全かつ継続的に利用できる状態をつくることを目指しています。

――その中で、カスタマーサクセスはどのような役割を担っているのでしょうか。

寺田氏:お客様に寄り添うことはもちろんですが、単に製品の使い方をお伝えしたり、活用度を高めたりするだけが、カスタマーサクセスの役割ではありません。製品を導入いただく背景には、必ず何らかのお客様の課題があります。その課題を紐解き、製品の活用を通じて解決することで、お客様の事業成長やビジネスの成功につなげていく。そうした存在でありたいと考えています。

――その先に、お客様には最終的にどのような状態になっていただきたいとお考えですか。

寺田氏:ROIにもつながる話ですが、定性的に申し上げれば、お客様がセキュリティを過度に意識することなく、使いたいテクノロジーを安心して使える状態が、私たちの目指すところです。

HENNGE Oneをご利用いただくことで、必要なセキュリティレベルを確保する。その上で、「新しい製品を使いたい」「新しいテクノロジーを導入したい」とご検討された際に、セキュリティがその妨げになることなく、テクノロジーの利便性を享受できる。そうした状態をつくることが、私たちが目指しているカスタマーサクセスです。

2. カスタマーサクセス高度化に着手した背景──ARR200億円という目標

HENNGE Oneの事業拡大に伴い、顧客数も増加を続けていた。そうした中、同社がカスタマーサクセスの高度化へ大きく舵を切る契機となったのが、2029年度にARR200億円を達成するという全社目標だった。

寺田氏:おかげさまでご契約いただくお客様の数も順調に拡大を続けています。そうした中で、2029年度にARR200億円を達成するという全社目標が掲げられたことが、一つの大きなターニングポイントになったと考えています。

この高い目標を達成し、さらに多くのお客様の成功を支えていくためには、従来のような属人的な対応だけでは限界があります。お客様が増え続ける中でも、それぞれのお客様に必要な支援を継続的に届けられる仕組みをつくる必要がありました。

必要な支援を、状況に応じて届け分ける仕組みへ

寺田氏:お客様の組織体制や製品のご利用状況によって、必要とされる支援の内容は異なります。そのため、すべてのお客様に同じ支援を提供するのではなく、それぞれの状況に応じて、必要な支援を適切に届ける仕組みを構築する必要がありました。

そのためには、まずお客様が現在どのような状況にあるのかを定量的に可視化し、把握できるようにすることが欠かせません。加えて、担当者による個別の人的支援(ハイタッチ)だけに依存するのではなく、それ以外の手段も組み合わせながら、必要な支援を適切なタイミングで提供できる基盤を整えていく必要があります。

こうした「お客様の状態を可視化する仕組み」と「状況に応じて支援を届け分ける基盤」の構築が、カスタマーサクセスの高度化に取り組んだ背景にありました。

スモールスタートから、ディビジョン全体の方針へ

カスタマーサクセスの高度化は、当初からディビジョン全体で一斉に始まったわけではない。以前からカスタマーサクセスディビジョンの一部組織では必要に応じた取り組みが進められていたが、2029年度の目標達成を見据え、その動きがディビジョン全体へと広がっていった。

この取り組みが一部組織の試みから組織全体の方針へと切り替わった時期について、藤原氏はこう説明する。

HENNGE株式会社 Customer Success Division / Customer Marketing Section Manager 藤原 竜也 氏

HENNGE株式会社 Customer Success Division / Customer Marketing Section Manager 藤原 竜也 氏

藤原氏:これまでも、個別の組織や限られた範囲では、必要に応じてカスタマーサクセスの高度化に取り組んできました。そうした部分的な取り組みを、2029年度の目標達成に向けて、カスタマーサクセスディビジョン全体へ大きく展開していく方針が示されたのが、2024年10月、弊社の2025年度が始まるタイミングでした。ここから、一部の組織における取り組みではなく、ディビジョン全体としてのカスタマーサクセス高度化が本格的に始まったと捉えています。

そして現在、取り組みのスコープはカスタマーサクセスディビジョンのさらに先へと広がりつつある。

藤原氏:現在はむしろ、カスタマーサクセスディビジョンだけの取り組みでよいのか、という課題意識を持っています。お客様に対して一貫した体験や支援を提供していくためには、セールスディビジョンをはじめ、マーケティングやインフラチームなど、会社全体を巻き込んでこの取り組みを広げていく必要があるのではないかと考えています。

導入フェーズと活用フェーズをまたぐ、顧客理解の連続性

カスタマーサクセスを高度化していく上では、組織や仕組みだけでなく、カスタマージャーニー上の課題も見えてきた。同社ではより専門的な支援を行うため、オンボーディングを担う導入フェーズと、その後の活用フェーズで担当が分かれている。松村氏が課題として捉えていたのは、分業そのものではなく、その間で顧客理解をいかに途切れさせずにつないでいくかという点だった。

HENNGE株式会社 Customer Success Division Scaled Success Section Manager 松村翔太朗氏

HENNGE株式会社 Customer Success Division / Scaled Success Section Manager 松村 翔太朗 氏

松村氏:弊社のカスタマーサクセス体制では、導入フェーズと活用フェーズで担当が分かれています。カスタマーサクセスにおいて、オンボーディングを成功させることはもちろん重要です。一方で、活用度が高まった上で、エクスパンションへとつなげていくためには、お客様のビジネスへの理解や、業界を取り巻く環境まで踏まえて、お客様が何を実現したいのかを捉える視点が欠かせません。しかし、導入フェーズでは、そうした視点まで十分に捉えきれないことがありました。

その結果、活用フェーズに入ってから、お客様の課題やその背景を改めて把握し直すことが生じていました。導入フェーズの段階から、お客様が抱えている課題やペイン、その背景までを的確に捉え、それらを活用フェーズへと引き継いでいく。カスタマージャーニー全体を通じて、一気通貫でお客様を理解し、支援できる状態をつくることには、まだ改善の余地があると感じています。

3. Gainsight CS・Customer Hub・Skilljarを段階的に導入した理由

こうした課題に対応し、カスタマーサクセスを高度化していくために、同社はGainsight CS、Customer Hub、Skilljarという3つの基盤を段階的に導入してきた。それぞれが担う役割は異なるが、目指しているのは、顧客の状態を捉え、その状況に応じて必要な支援や学びを届けられる仕組みを構築することである。

Gainsight CS──顧客状態を可視化し、活動を型化する基盤

その中でも、カスタマーサクセスの中核となる基盤として導入されたのがGainsight CSだ。まず求められたのは、顧客の状態をデータによって可視化し、継続的に把握できる環境だった。

寺田氏:カスタマーサクセスの高度化を進めた背景とも重なりますが、まず必要だったのは、お客様が現在どのような状況にあるのかをデータで可視化し、把握できる基盤を構築することでした。その基盤として、Gainsight CSを活用しています。

加えて、顧客の状態に応じてデジタル上でアプローチできることも、重要な選定理由だった。

寺田氏:Gainsight CSには、お客様の状態や特定のトリガー、シグナルに応じて、デジタルタッチでお客様にアプローチできる機能が備わっています。今後、デジタルを活用したアプローチを拡充していく上でも、「このような状態のお客様には、このコンテンツを届ける」といった施策を体系的に設計・実行していくための土台になると考え、導入しました。

さらに、属人化していたカスタマーサクセスの活動を型化する上で重要な役割を担うのが、ヘルススコアやCTA(Call to Action)などの機能だ。

ヘルススコアは、製品の利用状況や顧客との関係性など、複数のデータをもとに顧客の状態を可視化する機能。一方のCTAは、顧客の状態や変化をトリガーとして、カスタマーサクセス担当者が取るべきアクションをタスクとして提示・管理するための機能だ。

寺田氏:Gainsight CSには、ヘルススコアやCTAをはじめ、カスタマーサクセスの活動を支えるさまざまな機能が備わっています。例えば、お客様の状態に応じてタスクを起票することで、「この状態のお客様には、このアクションを実施する」といった形で、対応をある程度型化することができます。

もともと、カスタマーサクセスの活動が担当者ごとに属人化していたという背景がありました。個々の担当者の経験や判断だけに依存するのではなく、お客様の状態を起点に、必要なアクションを一定のルールに基づいて実行できるようにする。そうしたカスタマーサクセスの活動そのものを型化していくことも、Gainsight CSに期待している点です。

Customer Hub──活性度の高いコミュニティを、顧客データと接続する

Gainsight CSによって顧客の状態を可視化し、状況に応じたアプローチを実行する基盤を整える一方、同社では以前からユーザーコミュニティの運営にも力を入れていた。すでに多くのユーザーが参加する活発なコミュニティが形成されていたものの、そこで蓄積される活動データを、契約情報や製品の活用状況といった他の顧客データと十分に連携できていないという課題があった。

寺田氏:弊社のコミュニティ『chameleon』(カメレオン)はもともと別のプラットフォームで立ち上げており、その時点でも多くのユーザー様にご参加いただいていました。アクティブ率も40%程度と、比較的熱量の高いコミュニティではありました。

一方で課題だったのが、コミュニティ上でのお客様の活動データと、製品の利用状況などの他の顧客データをうまく連携できていなかったことです。コミュニティのデータ自体を取得することはできても、それを個々のお客様の情報に紐づけて活用するには、データ構造上の難しさと、データ連携にかかる運用負荷がありました。

そこで、コミュニティ上の活動データを、お客様の契約情報や製品の活用状況などとシームレスに連携し、運用に手間をかけず一元的に捉えられるようにしたい。そうした考えから、Customer Hubの導入を決定しました。

Customer Hubへの移行には、データを接続するだけでなく、コミュニティそのものをさらに活性化・高度化していく狙いもあった。

寺田氏:Customer Hubは、データの連動性はもちろん、コミュニティをさらに活性化し、機能面でもレベルアップしていくために必要な機能が備わっています。今後コミュニティをさらに拡大・発展させていく上で、「次にどのような機能や仕組みを整えていくべきか」を考える際の一つの指標やロードマップにもなると考え、Customer Hubへの移行を決めました。

――コミュニティは、どのような方にご利用いただいているのでしょうか。

寺田氏:弊社のお客様には、情報システム部門の役割を1名で担っている方も多くいらっしゃいます。そうした方々にとって、日々の業務の中で生じる悩みや課題について、他のお客様に相談したり、知見を得たりする場として、弊社のコミュニティをご利用いただくケースが多くあります。

実際にコミュニティへの投稿を見ていると、HENNGE Oneそのものに関するご質問だけではありません。情報セキュリティや情報システム部門の実際の運用について、「こういう状況なのだが、他社ではどのように対応しているのか」といったご質問も数多く寄せられています。

そうした問いに対して、お客様同士で知見や経験が共有され、新たな気づきが生まれることもあります。同時に、私たち自身も、そうしたやり取りを通じて、お客様が実際にどのような課題を抱え、現場で何に悩んでいるのかを学ばせていただくことが非常に多くあります。

Skilljar──セルフサービス化と、体系的な学びを支える基盤

3つ目の基盤となるSkilljarは、顧客自身が必要な知識を学び、製品の導入や活用を進められる環境を整えることを目的に導入された。

寺田氏:今後、お客様に製品の導入を進めていただくにあたっては、お客さまがご自身のペースで設定や導入を進められるよう、セルフサービス化を進めていきたいと考えました。そのためには、これまで担当者が個別にご説明していた内容の一部をコンテンツ化し、お客様ご自身で学んでいただける環境を整える必要があります。そこで、eラーニング形式で必要な情報を分かりやすく提供する基盤として、Skilljarを導入しました。

ただし、提供したいのは製品の使い方だけではないという。

寺田氏:製品の操作方法だけではなく、むしろ製品をご利用いただく上で必要となる背景知識も提供していきたいと考えています。セキュリティは学ぶべきことが多く、専門性の高い領域でもあるため、「何を、どの順番で学べばよいのか」と迷われるお客様も少なくありません。

そこで、弊社としてお客様に身につけていただきたい知識を体系立て、コースとして提供していきたいと考えました。そうした学習環境を構築できることも、Skilljarを導入した理由です。

3つの基盤を連動させ、Customer-led Growthへ

Gainsight CS、Customer Hub、Skilljarは、それぞれ独立した取り組みではない。顧客の状態を捉え、コミュニティで顧客同士をつなぎ、必要な知識を学べる環境を整える。3つの基盤を連動させることで、同社が目指しているのは、顧客自身が必要な情報や知識にアクセスし、成長していけるエコシステムの構築だ。

Customer-led Growthの概念図。Gainsight CS・Customer Hub・Skilljarの三位一体構造と、顧客が自律的に成長するサイクルを示す

Gainsight CS・Customer Hub・Skilljarを連動させたCustomer-led Growthのエコシステム概念図

寺田氏:現在導入している3つは、いずれもGainsight社のプラットフォーム上でつながっています。これらを連動させることで、コミュニティを一つの中心として、そこを訪れれば必要な情報や学び、他のお客様の知見にアクセスできる。そうしたエコシステムをつくっていきたいと考えています。

コミュニティを通じて提供する情報や学び、イベントなどの機会が、お客様一人ひとりの成長につながる。そして、弊社から一方的に支援を提供するだけではなく、お客様同士が学び合い、組織全体にポジティブな変化をもたらす。その結果として、お客様の事業を後押しし、弊社もともに成長していく。そうした「Customer-led Growth」の世界観を実現することが、私たちの目指している姿です。

基盤からコミュニティ、ラーニングへ──段階的に導入

3つの基盤は、一斉に導入されたわけではない。まず顧客の状態を捉えるGainsight CSを導入し、次にCustomer Hub、そしてSkilljarへと、実現したい顧客体験に合わせて段階的に範囲を広げてきた。

藤原氏:実現したいことに合わせて、段階的に導入を進めてきました。まず、お客様の状態を捉える基盤としてGainsight CSが必要だと判断し、そこから着手しました。次にコミュニティとしてCustomer Hub、その後にSkilljarという順序です。

一斉に導入したのではなく、一つずつ基盤を整えながら、その上で実現できることを広げてきたというのが、これまでの経緯です。この取り組みを通じて、お客様に提供できる価値も広がってきていると考えています。

こうした構想を具体化する上では、Gainsight社が開催するグローバルカンファレンス「Pulse」で触れた、米国の先行事例から得た示唆もあった。

藤原氏:Pulseで米国の先行事例を伺っていると、カスタマーサクセス組織自体が積極的にテクノロジーを活用し、それによってお客様に安心感やゆとり、快適さを届けている事例が多くあります。

私たちもテクノロジーを活用することで、お客様への支援をより良いものにし、その先のお客様のビジネス成果につなげていきたいと考えています。その大きな一歩として、Gainsight CS、Customer Hub、Skilljarがあると捉えています。

顧客ごとに最適な情報を届ける──「デリバリー」という課題

では、3つの基盤を連動させることで、具体的にどのような顧客体験を実現しようとしているのか。松村氏が挙げたのが、必要な情報を必要な顧客へ適切に届ける「デリバリー」の高度化だ。

松村氏:目指す姿という観点で申し上げると、現在私たちが課題として直面していることの一つがデリバリーです。デリバリーと一言でいってもさまざまですが、例えば製品のアップデートや最新のセキュリティトレンドなど、お客様にお伝えすべき情報をいかに適切にお届けするかということです。そうした領域をテクノロジーによって高度化し、できる限りお客様に負荷をかけずに情報を届けられる状態をつくりたいと考えています。

理想を申し上げれば、すべてのお客様に同じ情報を一律に届けるのではなく、お客様の状況に応じてパーソナライズされた情報を届けることが望ましい。そのための基盤となるのがGainsight CSです。そして、その情報を届ける場としてCustomer Hubがあり、そこで提供する学びの一つとしてSkilljarがある。

この3つを連動させることで、お客様ごとに必要な情報や学びが自動的に最適化され、必要なタイミングで自然に届けられる。そうした、お客様にストレスを感じさせない体験をつくり上げていきたいと考えています。

4. 導入プロセスで直面した課題と、その乗り越え方

HENNGE株式会社 Customer Success Division 3名 打合せ風景

Gainsight CS、Customer Hub、Skilljarの導入は、単に新しいツールを導入すれば完了するものではない。既存のシステムやデータ構造との接続、導入後の運用体制、既存コミュニティからの移行など、実装の過程ではさまざまな課題が生じた。

ここからは、ゼロワングロースが伴走した導入プロセスを振り返りながら、どのような課題に直面し、それをどう乗り越えていったのかを伺った。

課題1:散在するデータと、標準コネクタだけでは対応できないデータ連携

最初に直面したのが、Gainsight CSに取り込むデータの設計と連携だった。同社ではSalesforceを長年カスタマイズしながら利用していたことに加え、製品の利用状況を示すデータも別の環境に存在していた。

藤原氏:弊社では古くからSalesforceを利用しており、オブジェクトなどをカスタマイズして運用していたため、既存のデータ構造をそのままGainsight CSへ移行できる状況ではありませんでした。加えて、製品の利用状況を示すデータはSalesforceに格納されておらず、別の場所から取得する必要がありました。つまり、必要なデータが複数の場所に散在し、そのままでは取り込めない状態だったのです。

初期のエンティティ構造の設計も含め、標準で用意されているコネクタだけでは必要なデータを取得できないケースもあり、別の方法を検討する必要がありました。

当初想定していた方法では実現できず、別のアプローチを考えなければならない場面も出てきましたが、ゼロワングロースにはシステムやデータに関する知識と、それを実装するスキルセットがありました。そのため、そうした問題がプロジェクト進行上のボトルネックになることなく、その場で解決できたり、想定していた以上に短時間で解消できたりしたことは、大変助かった点です。

そうした技術面での対応力があったことで、Gainsight CSの導入は非常にスムーズに進められたと感じています。

課題2:導入して終わらせない──内製化を前提としたスキルトランスファー

もう一つ重要だったのが、導入後に誰がGainsight CSを運用・改善していくのかという点だ。ゼロワングロースがすべてを構築・運用するのではなく、HENNGE自身が継続的に改善できる状態を目指してプロジェクトが進められた。

藤原氏:運用を定着させていく局面では、私たち自身で試行錯誤しながら、必要に応じてアドバイスをいただく形で進めました。その結果、新たに実現したいことが出てきた際にも、最終的には自分たちで構築できる状態になっています。

ありがたかったのは、「すべてこちらで作っておきました」という進め方ではなかったことです。まず一つ型を作っていただき、「これを参考に、次は自分たちで作ってみてください。分からないことがあれば聞いてください」という形で進めていただきました。

導入を進めることと並行して、運用者や管理者へのスキルトランスファーも行っていただくことになります。単にシステムを構築するだけでなく、社内の管理者側に知識やノウハウを定着させるという点でも、大きな助けになりました。

課題3:既存コミュニティを引き継ぎながら、新たな基盤へ移行する

Customer Hubについては、ゼロからコミュニティを立ち上げるプロジェクトではなかった。すでに多くのユーザーが利用する既存コミュニティが存在していたため、その資産や利用体験をできる限り維持しながら、新たな基盤へ移行する必要があった。

藤原氏:Customer Hubの導入については、2020年より運用していたコミュニティがありましたので、ゼロから新しく立ち上げるのではなく、既存コミュニティからの移行プロジェクトという形でした。そのため、既存データをどのように移行するのか、どのデータを移行対象とするのか、どのような形式で移すのかなど、事前に検討しなければならないことが数多くありました。

加えて、コミュニティの運営を担当しているチームからも、「この日付以前のデータは移行しなくてよい」「この表示方法は避けたい」「ここはこう改良したい」といった、運用上の細かな要望が数多く出てきました。

そうした個別の要件に対して、ゼロワングロースには独自にコードを書いていただき、移行用のツールを開発していただきました。最終的には、そのツールを実行することで、必要なコンテンツやユーザーデータをまとめて移行できる状態まで整えていただきました。

既存コミュニティの運用や私たちの要望を踏まえながら、標準的な移行方法に合わせるのではなく、必要な仕組みそのものをつくって対応いただけたことは、大変助かった点です。

課題4:海外製ツールを、日本のユーザーに適した体験へ

Customer Hubの導入では、海外製のプラットフォームならではの課題もあった。標準機能だけでは、日本のユーザーに提供したい体験を十分に実現できない部分があったという。

藤原氏:Customer Hubには標準機能で対応できる範囲ももちろんありますが、Gainsight社のプロダクトはグローバル市場を前提に設計されているため、日本の商習慣やユーザー体験には必ずしも合わない箇所があります。

例えば、ユーザー様の心理的安全性を担保するために、匿名性としている弊社のコミュニティ上では表示したくない項目があっても、標準機能では非表示にできないといったケースが少なからずありました。

そうした部分について、ゼロワングロースにはスクリプトやCSSなどを用いて個別にカスタマイズしていただき、それらの項目を非表示にする形でリリースすることができました。

単にCustomer Hubを導入するだけではなく、グローバルで提供されているプラットフォームを、日本のお客様に適した形へカスタマイズできたことは、ご支援いただいた中でも非常に大きかったと考えています。

課題5:初めてのラーニングプラットフォームを、設計から実装まで立ち上げる

Skilljarは、HENNGEにとって初めて導入するラーニングプラットフォームでもあった。そのため、システムの設定だけでなく、どのような考え方で学習コンテンツを設計・制作していくのかというところから、新たに構築していく必要があった。

松村氏:こうしたラーニングプラットフォームの導入は、弊社としても初めての取り組みでしたので、まさに何も分からない状態から教えていただけたことが非常に助かりました。

具体的には、当初はコンテンツをどのように作成すればよいのかも分からない状態でした。そうした中で、「このような考え方でコンテンツを設計していきましょう」というところから丁寧にアドバイスいただき、コンテンツづくりを進めることができました。

加えて、コンテンツの設計だけでなく、実装フェーズやSkilljar上での設定作業までご対応いただきました。先に実装を進めていただいたことで、私自身がSkilljarの細かな仕様を一からキャッチアップする負担も軽減され、立ち上げをスムーズに進めることができました。

Skilljarを活用したHENNGEのラーニングプラットフォームは現在、『chameleon campus』(カメレオンキャンパス)としてベータリリースされており、年内の正式リリースを予定している。

松村氏:導入を進める中で分からないことが出てきた際にも、親身に相談に乗っていただき、その都度アドバイスをいただけたことは非常に助かっています。

5. 現在の到達点と、今後の課題

顧客状態の可視化を実現。次はビジネス成果との接続へ

HENNGE株式会社オフィスにて、ゼロワングロースとの打ち合わせの様子

Gainsight CSの導入によって、まず実現したのが顧客状態の可視化だ。製品の活用状況やHENNGEとのエンゲージメントなど、これまで複数の情報から把握していた顧客の状態を、ヘルススコアを通じて確認できるようになった。

寺田氏:変化という観点では、Gainsight CSによって、お客様の状態をある程度可視化できるようになりました。そこからヘルススコアも作成し、現在お客様の活用状況や、弊社とのエンゲージメントの度合いをすぐに確認できるようになっています。

その結果、お客様に何かをご提案したり、より活用いただくためのアドバイスをお伝えしたりする際にも、既存のデータをもとに「このお客様には、どのようなアプローチが必要なのか」を検討できるようになりました。こうしたデータを起点としたカスタマーサクセス活動の型化も、少しずつ進められるようになっています。

一方で、顧客状態を「見えるようにする」ことはゴールではない。次に取り組むべきなのは、ヘルススコアと実際のビジネス成果との関係を明らかにし、より実効性のある指標へと進化させていくことだ。

寺田氏:ヘルススコアについては、一度形にすることはできましたが、それが弊社のビジネス成果とまだ十分に紐付いていないという課題があります。

例えば、どのような状態のお客様がエクスパンションにつながりやすいのか。反対に、どのような状態になると解約のリスクが高まるのか。そうした実際のビジネス成果との関係まで見極められるようになって、初めてヘルススコアの意義があると考えています。

今後は、実際のエクスパンションや解約などの結果とヘルススコアを紐付けながら、その精度と納得感を高めていく。そこが、私たちが取り組むべき次のフェーズだと認識しています。

コミュニティ──熱量を維持しながら、規模と事業への貢献を拡大する

Customer Hubへの移行後も、既存コミュニティの熱量は維持されている。一方で、Customer-led Growthの中核となるエコシステムへと発展させていくためには、参加するユーザーをさらに増やし、コミュニティそのものの価値を高めていく必要がある。

寺田氏:コミュニティについては、プラットフォームを移行した後も新しい環境へのご登録が続いており、以前と大きく変わらない熱量を維持できていると考えています。

ただ、Customer-led Growthという世界観を実現する上では、コミュニティを中心としたエコシステムを構築していきたいと考えています。その状態に到達するには、まだユーザー数が十分ではありません。

より多くのお客様にコミュニティへ参加していただくための施策を進めるとともに、「ここに来れば必要な情報や知見が得られる」と感じていただけるよう、コミュニティそのものの存在感や有用性を高めていくことが、今後取り組むべきテーマだと考えています。

さらに、Customer Hubへの移行によって、コミュニティ上での顧客の活動をデータとして捉えられるようになった。次のテーマとなるのが、その活動と製品活用やビジネス成果との関係を明らかにすることだ。

寺田氏:コミュニティの活動データを可視化できるようになりましたので、今後はそれをお客様の製品活用やエクスパンションなどのデータと紐づけていきたいと考えています。

例えば、コミュニティへの参加や活動が、その後の製品活用やエクスパンションにどのようにつながっているのか。そうした関係を明らかにすることで、お客様にとってのコミュニティの有用性だけでなく、コミュニティが弊社のビジネスにどのように寄与しているのかについても、可視化していきたいと考えています。

エコシステムを「つくる」から、「循環させる」フェーズへ

Gainsight CS、Customer Hub、Skilljarという3つの基盤が整いつつある中、次のテーマとなるのが、それらを実際に顧客に活用してもらい、エコシステムとして循環させていくことだ。

単に複数の基盤を用意するだけではなく、顧客がその中で必要な情報や学びに出会い、実際の行動や成果につなげられる状態を目指している。

藤原氏:まずはエコシステムそのものを構築していくことが重要ですが、それを整えることはあくまで第一歩、第二歩だと考えています。その先で重要になるのが、お客様に実際にエコシステムを活用していただき、その中でさまざまな情報や学びに触れていただくことです。

そして、そこで得たものを実際の行動につなげ、価値を感じていただく。最終的には、お客様自身のセキュリティ環境の改善や、HENNGE Oneの活用を通じたビジネスの成功に寄与できるエコシステムであるべきだと考えています。

そのためには、こちらから一方的に情報を届けるだけではなく、お客様自身が必要な情報を見つけに来てくださる状態もつくる必要があります。プッシュとプルを適切に組み合わせながら、お客様の状況に応じた働きかけを行い、ビジネスの成功をご支援していきたいと考えています。

エコシステムを循環させる上では、顧客自身が学ぶだけでなく、得た知識や経験を他の顧客へ共有していくことも重要になる。

松村氏:Customer Hubはすでに運用が始まり、Skilljarも立ち上げを終えています。今は、いかに多くのお客様に利用していただき、アクティブなユーザーを増やしていくかという段階にあります。

例えば、Skilljarで学んで知識を身につけていただいたお客様が、その知識やHENNGE Oneを活用する中で得た経験を、今度はCustomer Hubを通じて他のお客様へ共有してくださる。そうした形で、自ら学び、活用し、さらに他のお客様へ知見を還元してくださる方を増やしていきたいと考えています。

お客様の学びや経験が別のお客様の学びにつながり、それがまた新たな活用や知見の共有につながっていく。そうした循環を生み出していくことが理想です。そのためにも、3つの基盤を単に導入するだけではなく、テクノロジーを使いこなしながら、この循環を支える仕組みをつくっていく必要があると考えています。

6. 今後の展望と、支援パートナーへの期待

Gainsight CS、Customer Hub、Skilljarという3つの基盤を整え、Customer-led Growthの実現に向けた次のフェーズへと進むHENNGE。一方で、カスタマーサクセスを取り巻く環境は変化を続けており、AIをはじめとする新たなテクノロジーをどのように取り入れていくかも、今後の重要なテーマとなる。

――最後に、ゼロワングロースに今後期待されていることをお聞かせください。

寺田氏:本日何度かキーワードとして挙げたCustomer-led Growthや、それを支えるエコシステムを構築していく上で、戦略的なアドバイスは引き続きいただきたいと考えています。

カスタマーサクセスそのものも、今後さらに変化していくものだと認識しています。グローバルでどのような変化が起き、どのような先進事例が生まれているのか。そうしたトレンドや事例を共有いただきながら、弊社が目指している方向性をより良い形へアップデートしていくための支援を期待しています。

また、今後の大きなテーマの一つがAIです。AIの台頭によって、これまで人が担ってきた業務に対して、新たな選択肢が生まれています。ただ、すべてをAIに置き換えればよいというものではありません。

まず業務そのものを整理し、その中でAIを活用することで効果が期待できる領域を見極め、適切に取り入れていく。そうした考え方が重要だと捉えています。

AIをどのように業務へ組み込んでいくのかについては、弊社としてもまだ十分な知見が蓄積されているわけではありません。また、AIを活用する上でセキュリティをどのように考えるべきかという点も、セキュリティ企業である私たち自身が引き続き学んでいくべき領域だと考えています。AIとの付き合い方についても、戦略的な視点からアドバイスをいただきたいと思っています。

実際、ゼロワングロースとの打ち合わせやSlackでのやり取りの中でも、AIを自然に業務へ取り入れている様子を拝見する機会があり、個人的にも非常に刺激を受けています。「AIを活用すると、ここまで仕事の進め方や仕組みそのものを変えられるのか」ということを日々学ばせていただいています。

そうした実践から得られた知見や先進的な事例についても、引き続き共有いただきながら、私たち自身の取り組みに生かしていければと考えています。

藤原氏:カスタマーサクセス全体でさまざまな取り組みを進めている中で、デジタル領域を担当していると、どうしても視点がデジタルに寄ってしまったり、検討する範囲がカスタマーサクセスの中だけに閉じてしまったりすることがあります。

そうしたときに、社内だけでは得られない視点や、より高い視座を外部のエキスパートから得られることは、非常に貴重だと感じています。

その意味では、今後は現在のシステム領域にとどまらず、カスタマーサクセス全体、さらにその先のカスタマージャーニー全体へと視野を広げていきたいと考えています。

お客様がご契約に至るまでのプロセスから、導入、活用、そしてその後も長くご利用いただくところまで、一貫した顧客体験をどのようにつくっていくのか。そうしたより広い視点からも、引き続きご支援いただければと思っています。

松村氏:私自身、今年Pulseに参加し、グローバルの先進事例や、それまで知らなかった考え方に触れることができ、非常にインパクトのある経験になりました。

一方で、そこで多くの情報や刺激を得ても、日常業務に戻り、目の前の仕事に向き合っていると、時間の経過とともにどうしても視野が狭くなってしまうことを最近感じています。

だからこそ、ゼロワングロースがさまざまな企業への支援やグローバルの動向から得ている知見や事例を、継続的に共有いただきたいと考えています。

単に事例をご紹介いただくだけでなく、「HENNGEであれば、こうした考え方もできるのではないか」「今の取り組みには、こういう選択肢もあるのではないか」といったことも、ぜひ率直にお伝えいただきたいです。

私たちだけでは気づけない視点を取り入れながら、自分たちの取り組みを継続的にアップデートしていきたいと考えていますので、今後もそうした役割を期待しています。

支援体制について|ゼロワングロース

本プロジェクトは、カスタマーサクセス基盤、コミュニティ、カスタマーエデュケーションという、通常であればそれぞれ個別に進められる3つの領域を、一つの構想のもとで段階的に立ち上げていくプロジェクトでした。ゼロワングロースも、その領域の広さに合わせて支援体制を構築しています。

プロジェクトには、カスタマーサクセスマネージャーとしての実務経験を持つ丸井、エンジニアリングのバックグラウンドを持つ安竹、Courseraでの経験を持ち、ラーニングプログラム設計の知見を持つ廣崎が参画。それぞれの専門性を生かしながら、全体構想の整理から、標準機能では対応できない領域の実装、日本市場に合わせたカスタマイズ、ラーニングコンテンツの設計までを支援しました。

また、本プロジェクトを通じて一貫して重視してきたのが、HENNGE様自身で継続的に運用・改善できる状態をつくることです。

すべてをゼロワングロース側で構築するのではなく、まず一つの型をつくり、それをもとにHENNGE様自身で実装していただく。そこで生じた疑問や課題を一緒に解決しながら、徐々に自社で対応できる範囲を広げていく。導入と並行してスキルトランスファーを進めることで、プロジェクト終了後も社内に知識と運用力が蓄積されることを目指しました。

Gainsight CS、Customer Hub、Skilljarという3つの基盤は立ち上がりつつありますが、Customer-led Growthに向けた取り組みは、ここからが次のフェーズです。顧客データとビジネス成果の接続、コミュニティとラーニングの活性化、そしてAIを含む新たなテクノロジーの活用など、HENNGE様の取り組みは現在も進化を続けています。

ゼロワングロースも、システムの導入・実装にとどまらず、Customer-led Growthの実現に向けた戦略と実践の両面から、引き続き支援してまいります。

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