ソフトバンク株式会社

AIを活用した高度なマーケティング戦略実行に向けて、キャンペーンマネジメントプロセスを構築

右から

  • 法人統括 法人マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション統括部 マーケティングオペレーション部 部長代行 田島 誠氏
  • 同部1課 赤尾 玲氏
  • 同部1課 平川 沙南氏

※部署・役職は取材日時点

日本を代表する先端的テクノロジーカンパニーの一角を担うソフトバンク株式会社は、主力となる通信事業を核に、情報・テクノロジー領域で多種多様な事業やサービスを推進し、社会や人々の課題解決を目指しています。2021年からマーケティングオペレーションに取り組み始めた同社では、AI活用に向けてデータ管理やオペレーションモデルの高度化に取り組み始めました。ゼロワングロースとともにキャンペーンマネジメントプロセス構築に取り組んだ背景やもたらされた効果と変化について振り返ります。

ソフトバンク様の直近のお取り組みや注力課題

現在のお役割について

田島様:ソフトバンクにはコンシューマ事業とエンタープライズ事業があり、私たちは約6,000名の従業員が携わっているエンタープライズ事業のマーケティングを担っています。限られた人数で市場やお客さまに価値提供していくために、デジタルやマーケティングの力は不可欠です。2017年から法人マーケティング本部を設立し、デジタル化が加速する中で同年、マーケティングオペレーションに取り組み始めました。マーケティングオペレーションという部署ができたのは2022年で、現在私は部長をやらせてもらっています。

赤尾様:私は主にAdobe Marketo EngageやSalesforce Sales Cloudの活用や構築を担当しています。特にプロセスの高度化・効率化に注力しており、マーケティング施策のプロセス管理に取り組んでいます。

平川様:これまでBIツールのDOMOを活用した可視化に取り組んでおり、2023年4月からマーケティングオペレーションのチームに異動し、マーケティング活動の可視化や分析を担当しています。今回のプロジェクトでのマーケティングキャンペーンのマネジメントではAdobe Marketo Engageの整理やDOMOを活用したアウトプットを主に担いました。

本プロジェクトの背景

田島様:ソフトバンクでは2021年頃からマーケティングオペレーションの一部に取り組みはじめ、2022年には部署として立ち上がりました。MQLに至るまでのお客さまのオンライン・オフラインでの行動についてシングルタッチで分析していましたが、これからよりお客さまにとって価値ある体験を提供し、その結果として営業に商談機会を提供できるように進化していくために、マルチタッチのアトリビューション分析へ高度化を図っています。その中で今回、キャンペーンマネジメントプロセス構築に至った背景は大きく3つあります。

  1. データ蓄積
    施策の費用対効果のデータを蓄積する
  2. 計画の共有
    全体を俯瞰して捉え、お客さまに価値ある施策計画を立てる
  3. インサイトによる高度化
    データを分析し、将来の施策に生かす

非常に多岐にわたるマーケティング施策を多くの部門で実践していましたが、その施策のデータ管理プロセスはない状態でした。費用対効果を含むノウハウを蓄積し、お客さまに価値ある施策をより効果的に実践していくために取り組んでいます。将来的にはAIがターゲットオーディエンスを踏まえて施策の計画の良し悪しを判断したり、何を実施することがより費用対効果が良いかを提示できたりするようにするために、この取り組みはそのための重要な土台づくりであると定義しています。

ゼロワングロース選定の理由

田島様:SoftBank World2023にご登壇いただくなど、丸井さんのことは以前から知っていました。お話した際に、悩みに対して理路整然と具体的にやるべきことを提示いただき、とても信頼できると感じました。一般的に多くのマーケティングのコンサルティング企業はテクニックよりの議論になることが多い印象ですが、ゼロワングロースの場合は仕組みを根本的に変えていきましょうと話される内容に納得感があり、取り入れていくべきだと共感できました。個々の最適化ではどうしようもない部分があり、テクノロジーやデータをより活用していくためには仕組みの変革が重要だと感じました。

平川様:丸井さんと廣崎さんの書かれた書籍『マーケティングオペレーション(Mops)の教科書』を読むと、できていないことがたくさんあると感じたのを覚えています。ただ、どこから始めるべきなのか悩ましい側面もありました。今回のキャンペーンマネジメントの話が出た際に、再度読んでみると丁寧に解説されており、この通りに実践していこうと思えるまさに「教科書」になっています。

赤尾様:『マーケティング(Mops)の教科書』は私にとっても部署異動の際の勉強に不可欠な一冊でした。平川さんのおっしゃるとおり、なにかあれば都度見に行って、現在地点を確認し、向かうべき方向性をチームの皆で共通認識を持つための立ち戻る場所になっていました。

キャンペーンマネジメントプロセス構築で得られた気づきや成果、現状課題

平川様:これまで本部全体を通して統一した形での施策の把握ができていませんでしたが、施策やデータを可視化できるようになりました。費用対効果の可視化についてはまだこれからですが、キャンペーンマネジメントをすることによって一つ一つ自分たちの行動がどういうものなのか、それが全体的にどういう位置づけになるのか把握できるようになったことはとても大きな一歩だと思います。

白いシャツを着ている女性自動的に生成された説明

平川様:ソフトバンクでは施策の種類によってグループが別れており、キャンペーンによって追っているものや規模感、実施数なども大きく異なります。グループに閉じた情報だったものが把握できるようになったことで、他グループの活動や結果を確認して気づきを得られています。活動の最適化につなげていくためのデータ収集や議論ができる環境になっています。

赤尾様:ゼロワングロースの支援を2024年2月に受けてからキャンペーンマネジメントプロセスが動き出したのは7月のことでした。ソフトバンクの企業規模を考えると早く進んでいるといえるのかもしれませんが、取り組む中で難しいと感じたこともありました。これまでそれぞれのグループで実施していた方法とは異なり、共通の軸による申請を求められたときに一定の混乱や反発はあるのは当然だと思います。それを一つ一つ理解しながら調整をし、導入しやすいようにアレンジを加えていく工程はとても学びの多いものでした。

白い壁の前にいる女性たち中程度の精度で自動的に生成された説明

赤尾様:全体最適を目指すと必ず個別最適化を実施したい方のニーズに応えられない部分は出てきますが、個別最適化ばかりだと全体に不利益となってしまいます。そのバランスをとっていくための社内のコミュニケーションは難しかったですが、その過程の中で相互理解が深まり、意思疎通のしやすさや仕事がやりやすくなったことを実感しています。ゼロワングロースのワークショップでの学びのおかげで自信を持ってこの施策の意義を説明することができたのも心強かったです。

平川様:このプロジェクトを通して社内コミュニケーションを深めていくことができ、他のグループの業務フローなどを把握することもできました。理解を深め意見を出し合うことで、システム面でもAdobe Marketo EngageやDOMOでのデータの流れや出力すべき形式を再点検できたのもよかったです。

赤尾様:マーケティングオペレーションの仕事にはコミュニケーション力が求められると書籍に記載がありましたが、社内調整をやりきる中で実体験として理解しました。それを経て今はこの取り組みが将来的なAI活用のための資産としてのデータ蓄積に関われたものだと実感しています。

キャンペーンリクエストプロセスの進化、今後のロードマップ

平川様:これからの課題は蓄積されたデータをうまく活用するということだと思います。『マーケティングオペレーション(Mops)の教科書』に書いていることを目指すとまだ道半ばです。生産性を向上させるための一歩として避けては通れないキャンペーンリクエストの仕組み化を実施できたことには満足していますが、これからはデータを態度変容に生かしていきたいです。

赤尾様:ラストタッチでの評価はこれまで実施してきましたが、マルチタッチで評価できるようになると多面的に貢献できる施策を把握できるようになると思います。蓄積されたデータをもとにマルチタッチで分析し、効果のあった施策の時期や内容などの特徴を踏まえて、次の計画に生かしていくなどインサイトを提示できるようにしていきたいです。

田島様:リクエスト後にWBSや人材のアサインなどを自動化したり、ROIが把握したりできることによって適切な人的リソースの再配分の検討などもできるようになっていくと思っています。成果を出しているプロセスをきちんと把握できているからこそ、AI活用による進化の余地があると考えています。

ソフトバンク様のMOpsチーム、今後の展望

田島様:おこがましいかもしれませんが、日本一BtoBマーケティングが洗練されている企業になりたいと思っています。目下、組織や人員配置やデータの整備に取り組んでいますが、やはり私たちはAIを生業にしている企業なので、世の中で最もAIを活用しているマーケティングができている企業にならねばと考えています。ディープラーニングと生成AIを両方活用しながら、まずはセグメンテーションとコンテンツでのAI活用を進めていく計画です。将来的には、AIエージェントによるワークフローの自動化の領域にシフトしていくことを目指していきます。

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