サードパーティインテントデータ 実際の運用から学んだ成功点と失敗点 Part 2

最終アップデート: 
June 9, 2022

前回に続き今回は既存リードとの再エンゲージにサードパーティインテントデータを活用したキャンペーンやそのナーチャリングの詳細をご紹介しています。

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この記事は前回の続きです。前回記事はこちら
「サードパーティインテントデータ 実際の運用から学んだ成功点と失敗点」

前回はインテントデータとは?やそのメリット、そしてサードパーティインテントデータを使用してターゲットアカウントでのリードジェネレーションを目標としたキャンペーンの詳細についてご紹介させていただきました。今回は既存リードとの再エンゲージにサードパーティインテントデータを活用したキャンペーンやそのナーチャリングの詳細をご紹介したいと思います。

 

Rise from the graveキャンペーン

ロストや案件・商談化まで至らなかった、マーケティングコミュニケーションに対して反応がなかったなどの理由でリサイクルした特定のリードに対して通称Rise from the Grave(直訳=墓場からの復活)キャンペーンを行いました。一度リサイクルされ必要最低限のマーケティングコミュニケーション(四半期ごとの製品アップデートやホリデーメールなど)しか行っていなかった既存データベースのインテントデータをBombora経由で取得し、適切なタイミングで再度エンゲージしてMQL/再案件/再商談化を図るという目標で行われました。このキャンペーンは対象を大きく二つに分類しました。

① 以前担当営業がついて案件・商談ステージまでいったがロスト・流れた既存コンタクト(数少なめ)

② 属性情報がマッチしていて、マーケティングコミュニケーションをある一定期間配信したもののMQLにならずリサイクルしたリード(数多め)


①以前担当営業がついて案件・商談ステージまでいったがロスト・流れた既存コンタクト

対象の数が少なかったため「営業からそれぞれ個人的にコミュニケーションを取った方がいいのではないか?」という声もありました。ただ、営業チームにエンゲージングなメッセージを定期的に送り結果をトラックする余裕がなかったこと、インテントデータを基に本当に再エンゲージができるのか試したかったこと、そしてそのためにはMA経由でできるだけデータを集めたかったという3つの理由からマーケティング主導で行うことになりました。まずインテントデータをBomboraで取得後、差出人を営業担当名に設定しナーチャリングを行いました。営業チームとのウィークリーミーティングでその週に送るメールの内容を共有し、電話などで営業担当にいきなり連絡がいった際もスムーズに対応できるよう、随時コミュニケーションは欠かさずにしました。同じく前週のメールへの反応も共有し、営業にボールパスする最適なタイミングを逃さないようケースバイケースで進めました。

難点としては、週単位で更新されたインテントデータを基に次に送信するメールを編集したり、パーソナライゼーションを加えるなど多くの場面で柔軟な対応が求められたのでとても時間と労力がかかったことです。キャンペーンが成功した際のボトムラインへの影響度は大きいですが、小さいマーケティングチームでは手のかかるプロジェクトになると思います。一気に始めずに絶対追いたいキーアカウントから始めてスケールしていくと良いと思います。

例として、前に他社を導入したアカウントのインテントデータをもとにナーチャリングして担当営業にパスしたところ、実は導入・運用がうまく進まず、今すぐではないが乗り換えまたは他製品の導入も含めて視野に検討している、という件がありました。また、以前は予算やタイミングの問題で案件化まで至らなかったものの、インテントをもとに再エンゲージしたところ、再度情報収集中というケースもありました。検討の早期段階からニーズを認識しエンゲージを続けられることは大きなアドバンテージですし、どちらもインテントデータがあったからこそ適切なタイミングで再エンゲージできた良い例でした。少し工数は必要ですが、その分リターンも大きいので投資する価値は大いにあったキャンペーンだと思います。


②属性情報がマッチしていて、マーケティングコミュニケーションをある一定期間配信したもののMQLにならずリサイクルしたリード

一方②は以前案件化まで行っておらず、製品への理解・興味関心度にも大きなばらつきがあったため、いきなりメールで再エンゲージして嫌がられるのを防ぐため、インテントデータを取得後、オーディエンスリストを作成し興味に沿ったディスプレー広告を配信→ナーチャリングストリームにのせるというステップを加えました。①に比べてこのリストのリード数は大分大きかったためそれぞれのインテントトピックに対してメールを一つ一つ用意するのが難しく、トピックを大きなテーマに分類しリードジェネレーションキャンペーンで予め作ってあったストリームをリサイクルして使用しました。最初はカジュアルで役に立つような内容のブログなどを送っていましたが、思うようにエンゲージメントを得られませんでした。他のナーチャリングキャンペーンからビデオコンテンツが効くと分かっていたので取り入れたかったのですが、インテントに沿ったビデオコンテンツを作るのは難しくインテントデータとぴったりマッチしていない既存のビデオで代用することもありました。


このように時間的・リソース的制限もあって、②のキャンペーンでは100%インテントデータをフル活用して運用できた!とは言い難い場面もありました。正直なところ①と並行して行っていたキャンペーンだったので蔑ろになってしまった部分もあります。このキャンペーンではナーチャリングで複数のタッチポイントを実現しMQL化したリードもいましたが、全体的に見るとエンゲージメントを得られた大多数がリサイクルから一般のリードに戻ったというのが現状でした。一度理由があってリサイクルされているので、今回のようにリサイクルから直接MQL化を目指すのではなく、まずはエンゲージすることでリサイクルから通常リード枠に戻し、その後のマーケティングコミュニケーションでMQL化などのKPIを目標にする方がベターだったと思います。こちらについては常時バックグラウンドでインテントデータをモニタリングし、的確なタイミングでリサイクルから外し、既存のナーチャリングに乗せる、というシンプルな運用でも十分効果が得られるのではないかと思います。


最後に

インテントデータの活用の幅は広く、もちろん今回2回でご紹介したものに限られません。たくさん失敗も試行錯誤もしましたが、やはりサードパーティインテントデータを運用することで自社にたどり着いていない潜在顧客の特定と訴求、そして既存データベースへの再エンゲージを適切なタイミングと内容でできる利点はとても大きいものでした。まだまだ試してみたいシナリオや活用方法も多々あります。昨今はファーストパーティとサードパーティインテントデータを組み合わせて活用した事例も多く出ています。ご紹介したBomboraのホームページにも面白いケーススタディが多々のっていますのでご興味のある方は是非ご覧になってみてください。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。