CLG(コミュニティレッドグロース)の成功例

最終アップデート: 
March 1, 2023

コミュニティ主導でビジネス成長を加速させる「コミュニティレッドグロース」という考え方をご存知でしょうか。プロダクト主導のPLGとの関連度が高く、相互作用を狙った成長戦略に注目が集まっています。

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CLG(コミュニティレッドグロース)とは?

Community-Led Growth(以下CLG)とは、ビジネスを成長させる主な手段としてコミュニティを活用するGTM戦略です。コミュニティの種類は特定のプロダクトにまつわるコミュニティや特定の興味をもつコミュニティなど様々ありますが、ここでは特定の製品にまつわるコミュニティ、プロダクトコミュニティについてフォーカスします。

プロダクトコミュニティでは企業がユーザー同士のコミュニケーションをサポートすることで、長い時間をかけてコミュニティを形成し、それがそのまま新規顧客獲得やビジネス活性化の原動力となります。この戦略は、実際にプロダクトを「使う人」と決済権限者などの「決める人」「買う人」が一致していることが多くなってきた昨今の状況にぴったりな考え方です。

CLGをうまく活用することで、企業自身も気づかないような方法でビジネス成長を加速させることができます。顧客が相互に影響し合いながら、企業が提供するプロダクトやサービスを利用するようになり、そのコミュニケーションの中からプロダクト改良のヒントを得ることができます。CLG戦略を成功させるためには、未来のプロダクトやサービスを生み出すようなコミュニティを意識的に作り出すことが必要です。実際にCLG戦略を成功させた事例をいくつか見てみましょう。

CLGの成功例

Duolingo

世界有数の語学学習アプリであるDuolingoは、CLG戦略を使って3億人のユーザーを獲得しコースを90以上も展開したことで知られています。同社はコミュニティ・ファーストの考え方のもと、ユーザーが学びたいと思うコースを作ったりユーザー同士が言語学習をサポートし合えるディスカッション・フォーラムを提供することでビジネス拡大に成功しました。

ユーザーからプロダクトの改良提案、質問、意見などを集めることで、ユーザー同士のコミュニケーションが自発的に行われるようになりました。このように有意義なコミュニケーションによってコミュニティが活性化すると、プロダクト改良のヒントが多数集まり、プロダクト自体のクオリティが上がります。結果としてプロダクトの利用も促進され、さらに様々なフィードバックが集まるというポジティブなループが生まれ、ビジネス成長に繋がるのです。

Notion

メモやタスク管理、データベースなど、多くのワークフローを一元管理するソフトウェアを提供するNotionは、自社独自のCLG戦略を用いたビジネス成長によってテック業界から注目されています。Notionの成功例を見ると、「プロダクト」と「コミュニティ」がビジネス成長を支える二つの柱になっていることがわかります。

同社はまず、プロダクトの特徴や特に優れたポイントを積極的にコミュニケーションすることで適切なターゲットにリーチすることに成功しています。その上でコミュニティ形成にも注力しており、Notionプラットフォームを使っているさまざまな企業のチャンピオン(社内での影響力を持つキーマン)を集めたコミュニティを作りました。コミュニティ内ではアイデアやベストプラクティスをシェアすることができるだけではなく、オピニオンリーダーに対して次に取るべきアクションについて質問することができるように設計されています。

ClickUp

2017年に設立されたオールインワンプロダクティビティプラットフォームClickUpは、PLGとCLGを組み合わせて400万人以上のユーザーを獲得し、評価額40億ドルを達成しています。クリックアップの成功の秘訣は、業種を選ばず、大きく広くサービスを展開したことにあります。

生産性向上のためのプラットフォームはたくさんありますが、そのほとんどが特定の生産性課題に焦点を当てたソリューションを提供しています。よって、その特定の課題が解決されると別のアプリケーションを使用することになります。そのような状況を打破するべく、同社の成長戦略では、ユーザーコミュニティからの定期的なフィードバックにフォーカスする方向に舵を切りました。そうすることで、ユーザーフォーラム、ソーシャルメディアコミュニティ、カスタマーサクセスチームを通じて、ClickUpのプロダクトチームがユーザーの動向を常に把握するようになりました。

PLGとCLGの相互作用

PLG(プロダクトレッドグロース)がプロダクトの使い方やユーザー体験にフォーカスして新規ユーザーの獲得やユーザー定着率の向上、顧客生涯価値(CLTV)の向上を目指す戦略であるのに対し、CLGはプロダクトの成長に対して長期的に直接影響を与え続ける強力なコミュニティの構築とその育成を目指す戦略です。つまりPLGとCLGは互いに影響し合いながらプロダクトを成長させ、ビジネス成長を実現しているということです。

https://www.chameleon.io/blog/community-led-growth

PLG戦略によって実現できること

  • プロダクト分析
  • 使用障壁を下げユーザーにプロダクトの価値を理解してもらうことができる
  • プロダクトチーム内の作業を一貫し、共通の製品開発目標をもてる
  • 顧客から継続的なフィードバックをもらい開発プロセスに取り入れることができる

CLG戦略によって実現できること

  • 口コミプロモーションによるプロダクトコミュニティの拡大
  • コミュニティによるプロダクトの認知度、知名度の向上
  • コミュニティメンバーとプロダクトチームとのエンゲージメント強化
  • コミュニティメンバーが相互にサポートすることによるサポートチケット数の減少
  • ユーザーのプロダクト知識レベルの向上
  • コミュニティからのフィードバックをプロダクト開発へ反映

このように、PLGとCLGではそれぞれ実現できることが異なっています。各々で実現されるバリューが双方向で密接に関連しているため、両方の戦略を取り入れることによってビジネス成長を加速させることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。CLGはPLG(プロダクトレッドグロース)との親和性が高く、プロダクトが魅力的になればなるほどコミュニティが盛り上がり、ビジネス成長に繋がります。自社コミュニティの在るべき姿を考え育成する過程で、ブランド認知度やソーシャルプルーフが必然的に高まるため、CLG戦略はマーケティング活動としての側面を持っていると言えます。帰属意識を醸成するマーケティング活動自体は目新しくありませんが、コミュニティの盛り上がりがそのままプロダクトフィットの評価に繋がるという点において、プロダクトチームにとってもCLGは注目すべきコンセプトです。自社ビジネスが口コミにより成長する要素を持っている、且つプロダクト開発やプロダクトフィットを重点的に改善したい場合にはCLG戦略の導入を検討してみましょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。