インテントデータを活用してABMを強化する10の方法

この記事では、BtoBマーケティングにおける企業(アカウント)単位でのターゲティングによるマーケティング手法であるABMを推進するにあたって、インテントデータを活用し、成果を高めるための10の方法を紹介していきます。

最終アップデート: 
January 17, 2024

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BtoBマーケティングでは、個人(リード)単位ではなく企業(アカウント)単位でのターゲティングによるマーケティング手法であるABMの概念が普及してきました。また、近年はMAやCRM領域の進化により、企業単位での興味関心に関するデータである「インテントデータ」を用いて施策・コミュニケーションの最適化を図ろうとする動きが増えてきました。この記事では、ABMを推進するにあたってどのようにインテントデータを活用し、成果を高めることができるかを紹介していきます。
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インテントデータとは

インテントデータとは、Webを中心としたデジタルチャネルでの顧客の能動的な行動に基づいた「興味関心」を示唆するデータです。自社サイトや外部サイトでの行動履歴や検索履歴を読み解くことで、見込み客が抱える課題やニーズを探ることができ、最適なタイミングで最適な情報を届け、製品やサービスの購入検討を進めます。

従来の企業データでは業界のトレンドや課題などを知ることはできましたが、あくまで「過去の」取り組みから得られるデータのため、最適なタイミングで営業活動を行うことは難しく、必ずしも効率的な営業活動には結びつきません。一方で、デジタルでさまざまな情報が得られる今日、問い合わせを待つインバウンドのアプローチでは情報収集や検討が進んでいることが多く、売り手側がサポートしながら商談を進めることが難しくなっています。

組織的な意思決定が行われるBtoBマーケティングにおいて、企業単位での態度変容を促すABMは非常に効果的ではありますが、リード単位のアプローチよりも難易度が高まります。ABMを成功させるためには、「正しいターゲット企業の選定」と「ターゲット企業に対する適切なタイミング・訴求によるアプローチ」が必要です。インテントデータはこの活動を支えるために用いることができ、ターゲティング精度の向上、アプローチの質の向上が見込めます。

インテントデータの種類

インテントデータは主にデジタルのタッチポイントから得られるデータですが、具体的には3つのデータに分けられます。

デジタルインテント

デジタルインテントとは、デジタル広告への反応やウェブサイト上の行動、商材に関連する特定のトピックに対する検索行動、サービスの使用状況など、デジタル上で特定のトピックへの関心を示す行動に関するインサイトです。

開示されたインテント

開示されたインテントとは、ゼロパーティーデータと呼ばれる、見込み客や顧客から開示されたインテントデータを指します。自社でアンケートを取ることもあれば、許諾のもとメディアやリサーチ会社が取得し、第三者に提供されるものもあります。

チャンピオンの動向

企業内のチャンピオンとは、顧客内で商品やサービスの導入を推進し、意思決定に大きな影響力を持つ人を指します。組織の課題の理解やその解決に向けての行動力がある人で、必ずしも最終決裁者とは限りません。従来は営業活動の中でチャンピオンを見つけ、アプローチすることが一般的でしたが、近年は役職者データベースを提供するベンダーもあり、この情報もインテントデータの一種に含まれることがあります。

上記で紹介した3種類のインテントデータをうまく活用していくことで、ターゲットとなりえる企業の理解が深まりますが、インテントデータのみに完全に頼ればいいというわけではありません。過去の取引実績や市場トレンドなど、従来から多くの企業が蓄積しているデータに基づくターゲティングも重要で、ICP(Ideal Customer Profile)と呼ばれる理想的なターゲット企業群を定義し設定すること、そしてその情報とインテントデータから得られるデータを組み合わせて、コンテンツの制作やアプローチに重みづけを行うことが重要です。

インテントデータによるABMの強化方法

それでは、ここからはABMを推進する際の具体的なインテントデータの活用法を紹介します。

1. 自社のビジネスに関するトピックのモニタリング

サードパーティインテントデータプロバイダーを使うと、自社のビジネスにつながるようなキーワードやトピックを特定し、関連記事などを閲覧しているアカウントを特定することができます。このようなインテントデータを用いること、例えばICP企業が特定のトピックで興味関心を示した際に担当営業にアラートで通知する、などのアクションをとることができます。営業チームはこの情報をもとに、興味関心を持つ可能性の高い企業を見定め、企業の意思決定者に向けて自社をタイムリーにアピールすることができます。

2. 見込み客のインテントデータをエンリッチメントする

インテントデータプロバイダーが提供するデータをCRMなどと連携することで、自社のデータベースを常に最新の情報にアップデートし続けることが可能です。属性情報はもちろん、プロバイダーによっては使用しているCRM・広告・マーケティングテクノロジーの洗練度など、各企業に関する企業データやテクノロジーに関するデータを表示させることもできます。これらのインサイトは、各アカウントにターゲットを絞ったアウトリーチキャンペーンを作成する際に威力を発揮します。

3. パーソナライズされたアウトバウンド活動

ABMの本質は、優先度の高い企業に向け、パーソナライズされたアプローチを行うことです。インテントデータを通じて、見込み客がどんな情報を求めているのか、ニーズは何か、バイヤージャーニーのどのフェーズにいるのかを知ることができます。この情報を活用し、マーケティングのメッセージを顧客のニーズに直接語りかける内容にカスタマイズできます。

製品やサービスを購入するのは企業単位ではありますが、最終的に購入を決定するのは1人ひとりのステークホルダーや意思決定者です。マーケティングキャンペーンや商談トークにインテントデータから得られた情報を盛り込むことができれば、大規模なパーソナライゼーションを行えるようになります。

例えば、ある企業がマーケティングオートメーションを探しているとします。もし彼らが「マーケティングオートメーションとは何か」といった記事を読んでいるのであれば、彼らはまだバイヤージャーニーの初期段階にいると考えることができます。しかしながら「マーケティングオートメーション導入までの流れ」のような記事を読んでいるのであれば、導入に近づいていると考えられます。このような情報からどんなコンテンツを提供するべきか、もしくはどんな営業トークをするべきかを決めることができます。

4. 競合他社との差別化

見込み客が問題解決の方法を探しているタイミングで訴求することができれば、競合他社に対して大きなアドバンテージを得ることができます。バイヤージャーニーの早い段階で見込み客と対話することによって、競合他社が追いつくことのできないレベルで信頼を築くことができます。さらに競合企業の名前をトラッキングすることで、競合について調べている見込み客を特定することもできます。そうすることで、マーケティングチームは自社独自のバリュープロポジションを強調し、特定の競合他社との差別化を図ることに集中できます。

5. 営業サイクルの短縮

リアルタイムのインテントデータを使用することで、見込み客にあったマーケティングキャンペーンの実行、意味のある会話、営業との前向きな関係構築につながり、結果として営業サイクルを短縮できます。バイヤージャーニーの初期段階でブランド認知度を高めておけば、営業担当がアプローチをした際にも唐突な印象を与えません。インテントデータから得られるインサイトは、社内のチーム全体のリソース配分や最適な予算投下にも役立ち、無駄を省くことで高いROIに寄与します。

6. チャンピオンの動向の記録

特にエンタープライズセールスに重要なのはチャンピオンの異動や退職です。チャンピオンの動向が把握できれば、いなくなってしまった際のリカバリーやターゲット企業の切り替えをすばやく行えます。また、チャンピオンだった人が異動先の部署や役職でさらに大きな影響力を発揮する可能性もあれば、転職先の会社でもチャンピオンとして行動してくれることも考えられるため、新たなアプローチを組み立てる上でも役立つ情報になります。

7. オーディエンスのリターゲティング 

インテントデータは、アプローチの優先度をつけ、顧客が抱える問題についてのインサイトを可視化することができるため、広告のリターゲティングやターゲット顧客の個別ニーズに合わせたメールキャンペーンの最適化が容易になります。

法人向けのプロジェクト管理ツールを提供する企業を例に取ると、マーケティングチームで導入済みの既存顧客において、別でエンジニアリングチームがプロジェクト管理ツールを探しているという高いインテントの通知を受け取るかもしれません。このようなインサイトを得ることができれば、見込み客とのエンゲージメントが容易になり、一部門のみの利用からビジネス全体のニーズにまで広げることができます。

8. 離脱フォームのトラッキング

見込み客が、デモの申込やブログの購読、ウェビナーへの登録など、Webサイト上のコンテンツにアクセスすることは非常に重要なインテント情報です。しかしながら、入力を完了せずにフォームを離脱してしまうと、用意していたキャンペーンを実行することができません。

そこで近年はチャットボットやフォームアシスタント機能などで、フォームに完全に入力されなかった場合でも、メールアドレス、役職、会社名などの情報を部分的にでも取得できるような工夫が行われています。これによって、見込み客のエンゲージメントとジャーニーの進行状況を追跡するために必要な情報を確実に入手することができます。

9. 商談につながるインテントの振り返り

受注した企業や商談を振り返り、商談の前にどんなインテントのトピックが急増していたかを確認します。これを「リアビューインテント」と呼び、CRMに蓄積された情報にもとづく重要なインテントを明らかにします。

これらのインサイトにより、成果につながるトピックや、受注した企業が共通して探している情報、具体的な検討をはじめる際に行う活動などが浮き彫りになります。このデータを通じて将来これらのアラートを活用し、営業トークやマーケティングコンテンツなどを改善するのに役立ちます。

10. 営業とマーケティングの連携

インテントデータは、営業チームとマーケティングチームがTAMの中でもさらに最適な企業をターゲットにし、優先順位を決めるのに役立ちます。営業チームとマーケティングチームは、インテントデータを使用して、最適な企業行動と関心を理解することができます。これにより、両チームは最初のタッチポイントから成約に至るまで、適切で一貫した体験を提供することができます。優れたデータ基盤と、両チームが閲覧できるテクノロジースタックを持つことが、集約された各企業のデータの鍵となります。
例えば、高いインテントスコアを持つ企業の担当者が資料ダウンロードのためにフォームに入力し、また同じトピックに関する最近のウェビナーに参加した場合、これらのインサイトとその企業に関する一連の履歴データを営業に伝えることができます。そうすることで、営業はターゲットに対してのアプローチを開始するために必要なあらゆる情報を得ることができます。

インテントデータを活用してABMを強化するためのまとめ

BtoBマーケティングの中でも高い成果を見込めるABMを推進するにあたっては、企業のインテントデータが鍵になります。さまざまなインテントデータを収集し、この記事で紹介したような方法でうまく活用できれば、他社に差をつける営業・マーケティング活動につながるでしょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
廣崎 依久
Director, Growth Strategy

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。