PRとコンテンツマーケティングを連動させるコツ

最終アップデート: 
March 14, 2023

PRとコンテンツマーケティングが個々に行われているのをよく目にしますが、オーディエンスに魅力的なブランドメッセージを伝えるという共通の目的を実現するには両者の連動が必要です。

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PRとコンテンツマーケティング

PRとコンテンツマーケティングは相容れないものであると認識されていることがあります。

PRとは「パブリックリレーションズ」の略称であり、本来は「公衆との関係値を築くこと」を意味しています。直接的な売上に繋がる製品やサービスの宣伝活動ではなく、公衆の共感を得ることを目的としたコミュニケーションがその軸にあります。しかしながらSNSを始めとするコミュニケーションツールの多様化を機に、PR活動と広告宣伝の境目が曖昧になり、PR=売り込みを目的としたプロモーション活動であるという捉え方が広まっています。

一方、コンテンツマーケティングは、インマーケットのバイヤーに直接売り込むのではなく、潜在層を含むオーディエンスの興味関心に寄り添うコンテンツを提供することで需要を育むという点に特徴がありますから、PR=売り込みを目的としたプロモーション活動であるという認識を持つ限り、PRとコンテンツマーケティングは両立できないものであり、いずれか一方を選択しなければならないという考えに至ることでしょう。

しかし実際は、両者の間には多数の共通点があり、連動させることでより効果を発揮します。特にプライバシーの観点からも広告への抵抗感が高まっている今こそ、コンテンツマーケティングとPRの両方をマーケティング戦略に取り入れることが重要なのです。

共通点と相違点

PRとコンテンツマーケティングの違いは、対象となるオーディエンスにあります。PRは一般的に、既存オーディエンスとの信頼関係を築くことを目的としているため、メディアや組織の既存顧客層へのリーチにフォーカスします。一方コンテンツマーケティングでは、顧客ロイヤリティの構築及び多くの新規オーディエンスにリーチすることにフォーカスすることが多くなります。SEO対策を意識したコンテンツ作成がまさに新規獲得を目的とした活動の一つです。

また、発信するメッセージも異なります。PRはプレスの確保やメディアとのリレーション構築、及び企業に関するネガティブインパクトを抑えるコミュニケーションが一般的です。一方コンテンツマーケティングでは、ブランド認知度の向上・ウェブトラフィックの増加・リード獲得など、マーケティング目的別のメッセージを発信しています。

PRとコンテンツマーケティングには明確な違いがある一方、大きくクロスオーバーする領域があります。コンテンツマーケティングではあからさまな宣伝は推奨されていないものの、セールスポイントや独自性・専門性をアピールすることは重要です。PR活動の中で得られるジャーナリストからのフィードバックやウェブサイトトラフィックデータは、コンテンツ制作に活かすことができます。

連動のメリット

PRとコンテンツマーケティング2つのアプローチを組み合わせることで、以下のことが可能になります。

1. SEOの強化

今日のデジタル時代において、SEOを用いたコンテンツの最適化は欠かせません。プレスリリースもオンラインで公開することで、検索エンジンで上位に表示され、オンラインでの露出を向上させることができるため、影響力向上に繋がります。プレスリリースの他にも、ソートリーダーシップの記事やホワイトペーパーを活用することができます。

2. コンテンツの価値を上げる

コンテンツマーケティングでは優れたコンテンツを作るだけではなく、人の関心を惹き露出を増やすことも重要です。これこそまさにPRの真価が問われるところです。PR会社は、主にインフルエンサーを通したコミュニケーション戦略や新規オーディエンスへのリーチ施策にも強みを持っています。企業のPRチームとコンテンツチームが協力することで、PR会社に匹敵するようなコミュニケーション戦略を実行することができるのです。

また、PRチーム側の要望にコンテンツチームが応えるというパターンもあります。例えば新ブランド立ち上げの発表に際して、オンラインですぐに共有でき、拡散されるようなインフォグラフィックスやショートビデオを制作することで、ニュースのフレッシュさを保ったまま記者やインフルエンサーにいち早く情報を届けることができます。

3. ブランドの一貫性を保つ

ブランドコミュニケーションとは、企業のバリュープロポジション、ブランドアイデンティティ、ブランドパーソナリティの魅力を高める活動です。

マーケティングチームが個別に活動していると、売上などの成果に注力するあまりブランドの本質を見失ってしまうことがあります。PRチームはそのような事態を回避する必要があります。この2つのチームが協力することで、一貫したブランドイメージを保った状態で、在るべきブランドコミュニケーションを実現できるようになります。

連動させるコツ

実際にPRとコンテンツマーケティングを連動させるのに役立つポイントを見ていきましょう。

1. 各々の強みを理解する

PRとコンテンツマーケティングは、同じ目標を持っている場合でもその方法が根本的に異なります。そのため、PRや広報のチームがSEOやコンテンツマーケティングチームが何をしているのか、どこに強みがあるのか理解することが重要です。

コンテンツマーケティングは通常、ターゲットの課題解決となり得るコンテンツを提供することで需要喚起を狙います。またはその中に製品やサービス特性を入れ込み、間接的な売り込みを行います。一方PR担当者はそのような活動は行いませんが、適切な人々と連絡を取り、適切なKPIを測定することを得意としています。2つのチームが連携するためには、それぞれのチームがどのように仕事をしているかを理解することで協力する範囲や方法を見つけることができます。

まずはタスクマネジメントツールのような場所で両チームの情報が行き交うようにしましょう。PR側がコンテンツマーケティングチームの全容を理解することから始めるのがおすすめです。常に最新情報にアップデートするように仕組みを作っておくことで情報共有がスムーズになります。

2. 社内エキスパートを選定する

コンテンツマーケティングとPRのコラボレーションには強いリーダーである「社内エキスパート」が必要です。ユニークな視点と専門知識を持ち、業界のソートリーダーになれるポテンシャルを持っている人が適任です。C-suiteや部門リーダーなど、組織内で一定の権威を持ち、その分野に精通している人を探しましょう。

社内エキスパートが決まったら、コンテンツ戦略と情報発信方法をチームで検討します。インサイトに満ちた情報、魅力的で先見性のあるストーリーをどのようなソースから作りだし、どのように伝えていくか考えましょう。

魅力的なコンテンツに仕上がれば、業界をリードする出版社が引用やインタビューに使ってくれるなど、PR側での影響力も期待できます。

3. 問題点を特定する

社内エキスパートが決まったら、PRとコンテンツマーケティング戦略のテーマを決めます。まずは、営業チームが営業プロセスで把握している問題点を明確にすることから始めましょう。問題点を把握して理解することで、PRとコンテンツマーケティング双方の戦略に活かすことができます。

コンテンツマーケティング戦略では、オーディエンスが抱える問題点を解消するようなコンテンツ(例えばブログ、ホワイトペーパー、Eメールキャンペーン、インフォグラフィック、ビデオ)がオーディエンスにとって有益で価値のある情報となります。

問題点をトリガーにしたコンテンツが仕上がったら、PRを活用します。その分野のトピックに興味を持つジャーナリストにコンテンツを売り込み、インパクトを出しましょう。その際には、売り込む対象となるジャーナリストが今何を求めているのか、及び彼らを取り巻く外部環境について理解していることが重要です。特定のトピックにコメントしたり、影響力を持つに値する人物を見極めましょう。

4. 相互補完できる戦略を作成する

さまざまな戦略をバランスよく組み合わせることで、両者の長所を生かしたり一石二鳥の効果を得ることができます。

代表的なのがデジタルマーケティングを用いた相互補完戦略です。例えばPR文脈で行うウェブサイト流入目的の広告キャンペーンは、遷移先をコンテンツチームが作成しているオウンドメディアに設定することで、コンテンツマーケティング戦略としての機能も果たすことができます。オウンドメディアへのトラフィックがセールスリードになれば、コンテンツマーケティングのROIを向上させることに繋がります。

他には業界のアワードを活用したPR戦略があります。業界で有名なアワードの受賞やノミネートはPRに最適なコンテンツです。アワード受賞をアピールすることで、コンテンツに対する信頼性を上げることにも繋がります。アワード受賞の権威を持って、オーディエンスが関心を持つトピックを発信するメディアや出版社の編集者に情報提供を始めることもできます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。PRとコンテンツマーケティングは相反するものではなく、むしろ同時に行うことで、両者のメリットを最大限に引き出すことができます。優れたPRやコンテンツマーケティング戦略は認知拡大、新規オーディエンスへのリーチ、信頼の構築、購買促進に寄与します。両者を連動させながら一貫したブランドコミュニケーションを実現しましょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。