コンテンツオペレーション

最終アップデート: 
March 22, 2023

コンテンツ制作は多額のマーケティング予算を必要とするため、常に厳しく評価され、改善が求められます。コストを抑えつつ質を担保するため、コンテンツオペレーションの重要性が高まっています。

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コンテンツオペレーションとは

コンテンツオペレーションとは、あらゆるチャネルで使用するコンテンツを適切に企画、作成、管理、分析するための仕組みのことです。

コンテンツオペレーションを用いることで、プロセス、人材、テクノロジー、及びコストの有効活用と効率化が期待できます。コンテンツ戦略から制作、ガバナンス、効果測定、管理まで、組織内のコンテンツに関わる活動を俯瞰的にとらえ、全体の最適化ができるのです。

コンテンツオペレーション導入のメリットは以下の通りです。

・プロセスの再現性を高めることができる

 タスクや事例を体系立てて管理することで必要な情報をチーム間で共有できる

・時間とコストの節約

 拡張性と再現性のあるプロセスを実現し少ない労力でより多くを行えるようになる

・組織の自信と信頼性を高める

 パーソナライズされた顧客体験を実現しエンゲージメントの向上や信頼性の向上に繋がる

・合理的な組織構造を作る

 コンテンツオペレーションのプラットフォームを導入するとより体系的にビジネスオペレーションを行える

・全プロセスの責任の所在が明確になる

 コンテンツオペレーションツールを導入するとコンテンツのパフォーマンスを細部まで確認し測定できるようになるため、ROIやKPI達成を意識した行動が期待できる

コンテンツオペレーションに必要なテクノロジー

コンテンツオペレーション成功の鍵はテクノロジーにあります。プロジェクトマネジメント/タスク管理、コンテンツ制作、分析&レポーティングなど、これら全てのステップで適切なテクノロジーを活用する必要があります。代表的なテクノロジーツールを以下に挙げました。

・プロジェクトマネジメント/タスク管理ツール
 プロジェクトやプロセスを構築し、人材のアサインや進捗状況を一元管理する、
 JiraAsanaなどのツール。
 コンテンツの制作から測定まで一連の流れをタスクとして登録し管理することが
 できる。

・デザインツール
 レポートやインフォグラフィックなどさまざまな形態のコンテンツをを制作する
 ウェブ・グラフィックデザインツール。

・コンテンツパフォーマンス分析ツール
 
 MAやGoogle Analyticsなどでコンテンツのパフォーマンスを計測。

・コンテンツオペレーションプラットフォーム
 さまざまなチャネルに広がるコンテンツを管理するコンテンツハブ。
 モジュール化されたコンテンツを再利用可能な方法で整理し、
 プロジェクト全体に展開可能にする。
 例えば、Webサイトを構築する場合、コンテンツの一部をモデル化し、
 プロジェクト全体で再利用することができるため、
 効率的かつ迅速に作業を進めることができる。

コンテンツオペレーション導入プロセス

では実際にコンテンツオペレーションを導入する方法を6つのステップで確認してみましょう。

1. コンテンツの目的とミッションの明確化する

コンテンツの目的、つまりコンテンツを通して実現したいことを明確化します。それが明確になったら、次にコンテンツのミッションを定義します。ここで重要となるのは「どのようなアセットを作るか」ではなく「目的に沿ったミッション」を明確にすることです。コンテンツによってどのようなバリューを獲得・提供したいのか考えます。「新入社員の獲得」「ブランドアドボカシーの向上」「顧客との関係を深めること」など、後工程で迷いが生じないように明確なミッションを持っておきましょう。

2. 主となる目標をいくつか設定してモニタリングする

コンテンツのミッションが定まったら、どのようにして成功を判断するかを設定します。定量的に測定可能なOKRを設定して目標を定めましょう。

3. コンテンツオペレーションチームを編成する

OKRが設定されたら、各タスクを担う人材が必要です。中央集権的な管理体制か、分散管理だが互いにサポートしやすい構造か、あるいはそのハイブリッドか、組織の構成と築いてきたカルチャーの中で機能するように編成することが必要です。

TCAがフォーチュン50社のために作成した組織図サンプルがとても参考になります。一番上はコンテンツ機能で、ブランドコミュニケーションとコンテンツセンター・オブ・エクセレンスの2つに分かれています。

https://contentmarketinginstitute.com/articles/content-operations-framework/

この組織図ではブランドコミュニケーションの下に、PR/メディアリレーションやソーシャル・デジタルコンテンツ開発や管理のチームが入っており、コンテンツ・センター・オブ・エクセレンスの下に、コンテンツ戦略ディレクターやデジタルアセットオペレーションマネージャー、オーディエンスマネージャー、ソーシャルチャネルとコンテンツのエキスパートなどが入っています。

4. ガバナンスモデルの形式化

運用の枠組みをどう構築するにしても、ガバナンスモデルが必要です。ガバナンスモデルの承認と予算を確保するためには、上級管理職の(理想的にはC-suite)の支持を得て、彼らにガバナンス体制の構築を主導してもらうことが重要です。

組織やコンテンツに対するニーズを常に把握するために、実際にコンテンツを運用する事業部と、コンテンツの制作や配信に関わるチームそれぞれの代表者を集めた、委員会のようなものを設定すると良いでしょう。この委員会の主な役割はコンテンツ施策全体のインプットとモニタリングであり、部門間のコミュニケーション窓口として機能します。

5. 効率的なプロセスやワークフローの構築

ガバナンスモデルを遵守するためには、すべてのコンテンツの制作プロセスをまとめることが重要です。インフォグラフィック、広告、CEOのスピーチなど、コンテンツが異なっていても同じプロセスで作成するのです。まずは現状の政策プロセスを確認するため以下の点を把握しましょう。

  • 社内外含め制作プロセスに誰が関わっているのか
  • 進捗状況の把握方法
  • 実行者・承認者は誰か
  • 完成後のコンテンツはどんなステップで公開されるのか

これらをドキュメント化すれば、プロセスを基本的なワークフローに統合し、異常値や臨時のコンテンツニーズやリクエストに対応できるように効率化することができます。

6. 最適なテクノロジースタックを導入・選定する

現状の自社のテックスタックを確認します。テクノロジーオーディットを行い、重複する機能を持つものなどを排除し、可能な限り簡素化しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。「モノ」の提供だけでなくその「体験」を含めた価値訴求が求められている現代、マーケティング活動の鍵を握るのはコンテンツです。コンテンツ戦略が正確なデータに基づく適切なものであれば、ブランドはあらゆるチャネルで顧客と強い信頼関係を築くことができます。コンテンツオペレーションのフレームワークを確立するには、テクノロジーの導入のみならず、組織自体の変革が必要です。変革のスポンサーとなり得るトップマネジメント層をどう巻き込んでいくのかも今後の大きな課題となるでしょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。